かつては珍しかった太陽光発電用のソーラーパネルや蓄電池ですが、今では太陽光パネルを乗せた住宅は一般化しており見慣れた風景の一部になっています。
個人の住宅だけではなく広い土地に多数のソーラーパネルを設置したメガソーラー発電所も出現し、とくに日照時間の長い地方などではあっという間に太陽光発電が拡大。
太陽光発電は半導体に太陽光を当て、その光エネルギーを電気に変える「光起電力効果(ひかりきでんりょくこうか)」とよばれる現象を利用して発電しています。
太陽光が当たればいつでも発電できる太陽光発電は、排気ガスや二酸化炭素、有毒な放射性物質などの廃棄物を発生させることのないクリーンエネルギーとして脚光を浴び今日にいたっています。
今回は太陽光発電の盛りあがりと衰退、政府による固定価格買取制度(「Feed-In-Tariff」の頭文字で「FIT法」)、太陽光発電と気候の関係などについてまとめています。
日本で初めて設置された住宅用太陽光発電は1992年のこと。
1994年に太陽光発電普及のための補助金制度が開始され、その後のテクノロジーの発展(ソーラーパネルの価格低下)、環境問題へ高まる意識などから徐々に太陽光発電は普及。
ところが2011年に起きた東日本大震災により様相は一変。
地震により日本全国で稼働していた原発が停止し、同時に火力発電や自然エネルギーによる発電が見直され、災害時に自力で電力を生みだせる太陽光発電に注目が集まりました。
さらに2012年に開始された全量買取制度(10キロワット以上の太陽光発電はすべての電力を国が定めた金額で電力会社が買いとる:FIT法と呼ばれる)開始により「太陽光バブル」ともよべるような盛りあがりに発展したのです。
個人が住宅の屋根にソーラーパネルを設置し発電するのはもちろん、企業や投資家などがつぎつぎに「ソーラー発電所」を建設し、日当たりのよい空き地はあっという間にソーラーパネルによって埋め尽くされ景色も大きく変化。
投資目的として太陽光発電所の設置を企業や投資家に売りこむ企業も出現し、日本中が太陽光発電ブームに沸きました。
太陽光発電ブームのピークは2013年といわれていますが、翌年2014年には国の補助金制度が廃止され、さらに国が買いとる売電価格も2009年の48円から2019年には24円~26円まで落ちこみ、2020年にはさらに21円前後まで下落。
売電価格の下落で投資として積極的に太陽光発電を導入する企業や投資家も減少。
さらに2017年の改正FIT法によりそれまで必要なかった「事業計画書」の提出、メンテナンスの義務化、また、みなし認定や事業計画認定されてから3年以内に運転開始しなければ売電期間が短縮されるなどの制度変更により、新規に太陽光発電事業を開始するハードルが高くなり大いに盛りあがった太陽光ブームは過去のものに。
今でも太陽光発電事業を始める方がいますが、かつてのような勢いが見られないのが現状です。
2012年に始まった国による固定価格買取制度(FIT法)は、太陽光発電を事業や投資として促進させるための起爆剤になりました。
FIT法では太陽光・水力・風力・バイオマス・地熱などの自然エネルギーによって発電された電力を、国が決めた価格で電力会社が買いとることを保証しており、太陽光発電の場合は10キロワット以上の施設が対象になります。
買取が保証されている期間は10キロワット以上の施設で20年ですが、この20年も大きな魅力になったことは間違いありません。
「どんなことがあっても国が20年間売電価格を保証してくれる!事業としてはかなり安全」という意識から多くの企業や投資家、個人が太陽光発電事業に参入し、太陽光ブームが巻き起こったのです。
ところが今、10キロワット以上の売電価格は2012年の40円でしたが2020年には13円まで大幅に減少しています。
FIT法が開始された2009年当時は、個人住宅による太陽光発電にしか適用されていませんでした。が、2012年から産業用太陽光発電にもFIT法が適用され、太陽光による発電量が大幅にアップ。
発電量が増えたことで売電価格が年々減少しているのです。
10キロワット以上の事業用太陽光発電は「余剰買取制度」か「全量買取制度」のどちらかを選択できますが、現状では少しでも高く電力を売却するため「余剰買取制度」を選ぶケースが増えています。
10キロワット以下(一般住宅の太陽光発電)の場合、自宅で消費した残りの電力を買いとる「余剰買取制度」の仕組みを利用することになり、電力の全量を電力会社に買い取ってもらうことはできません。
ただ個人の住宅用にもFIT法は適用されているため、国が定めた売電価格が保証されているのは安心ですね。
住宅の場合は買取期間が10年と決められており、買取期間が満了した場合は2つの方法から余剰電力の使い方を選択できます。
・発電した電力を全量自宅で消費する
・「自由契約」で電力の買取可能な業者と個別契約し余剰電力を売電する
自由契約の場合売電価格や条件は業者により違いがあるため、どの業者に余剰電力を買ってもらうかその選択が重要になります。
業者によってはかなり安い価格で買い叩く悪質なケースもあるため、見積もりをとりじっくり比較すると安心です。
太陽光発電は日照時間の長い土地に設置するのがベストです。
太陽光を電気に変えるため、少しでも太陽光が当たる場所を求めてソーラーパネルを設置するのが基本。
そう考えると「強烈な太陽光があればフルパワーで発電できるはず」と考えても不思議ではありません。
確かに真夏は太陽光が強烈ですが、気温も大幅上昇。
じつは気温があがるとソーラーパネル内にある半導体の機能が低下し、発電量が低下してしまうという特性があるのです。
ソーラーパネルの発電量がカタログに掲載されていますが、これはどのメーカーも25℃を基準にして発表されており、カタログ値を鵜呑みすることはできません。
季節や日照時間、その日の天候など外的要因により発電量が変動するため、カタログ値は参考程度にとどめるのが無難。
ただアモルファスシリコンを使った「HIT(ヘテロ接合型ソーラーパネル)」は高温になっても発電効率が落ちにくくなっており、気温が上昇しやすいエリアではとくに有効です。
太陽光発電の発電量が最大になる季節は…
1・日照時間が長い時期
2・気温がそれほどあがらない時期
という2つの要素が重なる春先から初夏のシーズンになります。
とくに発電量が多いのは梅雨前の5月。
ただソーラーパネルがゴミやホコリで汚れている、雪が積もるとパネルが汚れる、パネルが日陰になるなどの要素がある場合は思ったほどの発電量が得られないことも。
ソーラーパネル設置時にはパネルの方向や遮蔽物の確認、定期的なメンテナンスなどで発電量を維持できるように配慮するのがベストです。
日本での住宅用太陽光発電は1992年に始まり、以後、国による補助金制度開始、東日本大震災による自然エネルギーへの意識の高まり、2012年のFIT法と、太陽光発電を推し進める流れが続いていました。
今は売電価格の低下やFIT法の改正などにより、かつてのような太陽光ブームは影をひそめています。
ただ太陽光発電は廃棄物や有害物質を吐きださないクリーンエネルギー。